NPSの真価は、機能自体にあるのではなく、使い方次第で発揮されます。NPSを最も有効に活用する方法について、ベストプラクティスに関する3部構成のシリーズ記事で詳しく紹介いたします。
- Net Promoter Scoreの概要と活用方法
- NPSアンケートを実施する最も効果的な方法
- NPSの結果を分析し、アクションを起こす(この記事)
このシリーズの3番目、つまり最後を飾るこの記事では、NPSアンケートの最も重要な側面について詳しくご紹介します。具体的には、結果の意味するところを理解したうえで、状況を改善するためのアクションプランを作成します。
NPSの結果からわかること
以前に説明したように、NPSは企業に対するカスタマーのロイヤルティの指標となります。NPSのスコアは、回答者の全体に占める「推奨者」の割合から「批判者」の割合を引いた数値です。この計算式により、-100~100の範囲のスコアが算出され、あなたのネットプロモータスコアとなります。では、自社のNPSが良いか悪いかどうすれば判断できるのでしょうか。
初回のNPSアンケートキャンペーンを送信した後、初回のNPSの結果を、今後の改善の土台とするとよいでしょう。マイナスや0のスコアを記録したからといって、あなたの会社のパフォーマンスが悪いとは限りません。業界によっては、0というスコアが、同業他社よりもずっと高い場合があります。
スコアではなく、カスタマーのフィードバックに重点を置き、徐々にスコアを改善していきましょう。
カスタマーレポートを作成してNPSの結果を分析する
NPSダッシュボードでは、送信した各NPSアンケートの回答から、自動的にグラフを作成します。このグラフにより、NPS結果の概要をすばやく確認できます。
しかし、任意のサードパーティレポートツールを使用すれば、結果を詳しく調べ、より意味のある分析を行うことができます(ExploreはNPSデータを測定しません)。独自のカスタムレポートを作成し、Zendesk Supportで追跡している任意のデータポイントに照らしてNPS結果を詳細に分析することもできます。
以下に紹介するのは、会社で役に立つレポートの例です。
NPSアンケートの回答を評価別に表示する
以下は、NPSアンケートの回答を評価ごとに表示するカスタムレポートの例です。このレポートでは、カスタマーの回答の分布状況をすばやく把握できます。
特定のスコアを詳しく検討したい場合、NPSの回答をCSVファイルにエクスポートできます。そして、目的の回答だけをフィルタリングして表示できます。たとえば、8のスコアを付けたカスタマーに対してのみ詳細な分析を実施し、スコアを9に押し上げるためにできることを突き止めたいとします。
エクスポートしたCSVファイルを使用して、カスタマーのコメントをすべて読むか、テキスト分析ツールを使用してフィードバックを分類することができます。Zendeskでは、テキスト分析にClarabridgeを使用していますが、それ以外に、CSVファイルを会社全体で共有し、すべてのフィードバックに目を通すこともしています。
カスタマーの利用期間の長さとNPSの傾向
このほかに、カスタマーの利用期間の長さとNPSの傾向を比較できるカスタムレポートを作成できます。
好ましい傾向は、利用期間の長いカスタマーの中に推奨者が多く見られることです。このような傾向が見られない場合、もしかすると長期カスタマーの一部が解約を検討しはじめているかもしれません。これは、カスタマーサービスで何かが間違った方向へ進んでいることを示唆しており、調べてみる必要があるでしょう。
会社に対する顧客心理をカスタマーのタイプごとに分析する
レポーティングツールで、作成したカスタムユーザーデータや組織データをレポート可能な属性として取得する場合は、カスタマーのタイプ(見込み、パートナー、フリーミアムカスタマー、有料カスタマーなど)など、関連する顧客情報を取得することができます。
そして、カスタマーのタイプごとに異なる心理についてさらに理解を深め、カスタマーのタイプに基づいてカスタマーサービスを改善できるように、カスタマーのタイプ別にNPS評価を分析するカスタムレポートを作成できます。
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What:NPSの推奨者の評価の件数、NPSの中立者の評価の件数、NPSの批判者の評価の件数
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How:カスタムユーザー/組織フィールド(カスタマーのタイプなど)を属性として選択
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Filter:カスタマーのタイプまたは調査する期間を選択するオプションのフィルター

総合的なカスタマーロイヤルティに対する良質なカスタマーサービスの影響を測定する(NPSとCSATの比較)
事例に基づいて、高品質なカスタマーサービスが、会社の最終的な収益に影響を与えうるということは周知の事実です。一方、カスタマー満足度の価値はどのようにして計測できるのでしょうか。
高いカスタマー満足度がネットプロモータースコア(NPS)に影響するかどうか、そして影響する場合はどのように影響するかを測定することができます。カスタマー満足度評価が向上すればするほど、同時にNPSの結果も向上します。これは、サポートチームにとって良い知らせです。
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What:満足度スコア(%)、NPSスコア
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How:イベントの時間の範囲を選択します(例:Month/Year (Event))。
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Filter:イベントの時間範囲を定義します(例:Month/Year (Event) is last 6 monthなど)。
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グラフのカスタマイズ:満足度スコアを主軸のY軸に、NPSスコアを第2軸のY軸にプロットします。
重要顧客をつなぎとめる(NPSと総支出/月次経常収益の比較)
その他の有用な分析手法として、顧客が自社から購入したさまざまな製品および支出額に基づいてNPS結果を検討する方法があります。重要顧客がNPS評価で9または10のスコアを付けていない場合、より詳細な分析を実施し、その理由を調査した方がよいでしょう。
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製品ラインのドロップダウンフィールド
- 総支出額/月次経常収益(サブスクリプションサービス業界)用の10進数型フィールド
ドロップダウンフィールドは、レポートの「How」セクションに挿入できる属性として、サードパーティのレポーティングツールに取り込む必要があります。
次に、批判者、中立者、推奨者をグループ分けするカスタムメトリックを作成します。
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What:批判者、中立者、推奨者
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How:製品ライン
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グラフのカスタマイズ:棒グラフ選択
NPSを改善するには
NPSレポートがどんなにすばらしくても、知識だけでは顧客の満足度は改善されません。有意なレポートと各項目の分析結果に基づいて、アクションを起こし、顧客満足度(およびネットプロモータースコア)を向上させましょう。
思い切ってNPS結果を公開する
顧客からの率直なフィードバックを公開することには、不安が伴うものです。しかし、これこそが、改善につながる第一歩なのです。
NPS結果をCSVファイルにエクスポートし、会社全体で共有しましょう。顧客があなたの会社に対して抱いている不満は、社内のどの部門からも生じた可能性があるのです。フィードバックを共有することで、組織全体で顧客に対する共感力が高まり、個々のカスタマーエクスペリエンスを向上させる方法によい影響が現れます。
部門をまたがるタスクフォースを形成する
カスタマーエクスペリエンスの向上には、製品、サポート、営業、マーケティングなどの部門にまたがるチームとしての取り組みが必要です。NPSアンケートの顧客フィードバックを会社全体に公開したあと、顧客が現在かかえているトラブルや問題を解決するアクションプランを作成するために、部門の垣根を超えたタスクフォースを組織することが必要になるかもしれません。
これには、過去数年間、Zendeskが自社のチームで取り組んできました。カスタマーエクスペリエンスは、カスタマーサービスチームだけが責任を負うものではありません。カスタマーエクスペリエンス全体は、製品の開発工程、営業チームとのやりとり、Webサイトでの宣伝方法などによって成り立っているからです。
アクションプランを作成する
NPSの結果を分析すれば、批判者が解約を検討している理由、中立者があなたの会社を周囲に勧めない理由、推奨者があなたの製品やサービスを愛好している理由についての理解が深まるはずです。
中立者の共通項を突き止め、中立者を推奨者に変えるために、ウィークポイントの解決に向かって取り組みを開始しましょう。批判者については、「重度」の批判者に重点的に取り組み(4~6のスコアを付けた顧客など)、少なくとも中立者グループに移行するように働きかけます。部門の垣根を超えたタスクフォースを組織することで、製品の品質を向上させたり、カスタマーケアをレベルアップするなど、カスタマーエクスペリエンスの妨げとなるあらゆる問題に取り組むことができます。
最後に、推奨者についても忘れないでください。あなたの会社の製品やサービスを推奨者が愛好する理由を理解し、推奨者やほかの顧客が引き続き同じ顧客満足度を体験できるようにしてください。
予防的保守を実施する
時には、あなたの会社に0というスコアを付けた顧客を推奨者に変容させることは不可能かもしれません。このような顧客に対して希望を失い、諦めるのではなく、「予防的保守」と呼ばれる対策を実施することができます。スコア「0」という評価を付けた本人にできることは何もないかもしれませんが、他の顧客が最初から「0」を付けるのを防ぐことができます。
批判者が低い評価を付けた理由を理解し、他のユーザーが今後低い評価を付けることを防ぎ、いずれはネットプロモータースコアを押し上げたいとは思っているはずです。
あきらめずに続ける
NPSの測定に対する投資は、長期的な投資です。一夜にして事態が改善することはありません。一方で、あなたのチームが定期的にアンケートを実施し、フィードバックの分析を適切に実行し、フィードバックの内容を社内で共有し、チームとして改善に積極的に取り組むことで、顧客の長期的な囲い込みとロイヤルティという利益を得ることができます。
以上が、3部構成のベストプラクティスシリーズのまとめです。NPSの導入の検討については、この初心者向けガイドを参照してください。
**Net Promoter、NPS、およびNPS関連のエモーティコンは、Bain & Company, Inc.、Satmetrix Systems, Inc.およびFred Reichheldの登録商標、Net Promoter ScoreとNet Promoter Systemはサービスマークです。
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