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ナレッジベースのコンテンツの企画、執筆、管理を行う方のために、このシリーズの記事では、セルフサービスのコンテンツを企画・執筆・レビューする方法や、コンテンツを構成してヘルプセンターでカスタマーに提供する方法、コンテンツが利用されるように記事を目立たせる方法、そしてカスタマーのニーズを満たし、満足度を高めるために継続的にナレッジベースを改善する上で必要なことを紹介します。
シリーズのパート1となる本記事では、セルフサービスチャネルの概要と、コンテンツの作成、管理および改善を行う上で必要となるZendesk内の各要素について紹介します。
セルフサービスの定義
セルフサービスとは、カスタマーサービス担当者に問い合わせたりやりとりすることなく、カスタマー自身で質問に答えたり問題を解決したりするために必要な情報を見つけられることを意味します。そのために、カスタマーはナレッジベースの記事で提供される説明や指示に頼ることになります。
記事の内容はセルフサービスチャネルの中核であり、記事を取り巻くプロセスやテクノロジーは、カスタマーにコンテンツの存在に気付かせ、それを確実に利用させるためのものです。また、それらのプロセスやテクノロジーは、コンテンツのカスタマーへの貢献度を評価したり、人対人のカスタマーサービスへの依存度の低減という目標を達成するのに役立ちます。
セルフサービスチャネルはこれらの要素(言葉、テクノロジー、プロセス)によって構成され、セルフサービスを実現するためには多くの手順とさまざまなロールやメンバーが必要となります。このガイドでは、セルフサービスチャネルのコンテンツ作成に焦点を当てていますが、その他の手順に関する詳細情報へのリンクも提供しています。
セルフサービスのビジネスケースの作成
- カスタマーの69%は、できるだけ多くの問題を自分たちで解決したいと考えており、そのためにセルフサービスを利用しようとしています。
- また61%のカスタマーは、問題をスピーディに解決することがカスタマー満足度の最も重要な指標であると答えています。カスタマーが必要なコンテンツをセルフサービスですぐに見つけることができれば、サポートエージェントに問い合わせしたり、エージェントからのサポートを待ったりする必要はありません。
これらの数値は、カスタマーエクスペリエンスのインサイトとデータを提供するリーディングプロバイダーであるGartner社から入手したデータです。また、自分で問題を解決しようとする多くのカスタマーのうち、成功するのは9%程度だそうです。これは、セルフサービスが提供されていないか、導入が不十分であることが原因と考えられます。このことは、中小企業にとって特に重要です。なぜなら、中小企業のカスタマーは、他の規模の企業に比べて、セルフサービスを利用を好む傾向が2倍も高いからです。
このデータは、カスタマー満足度に対するセルフサービスの価値を示していますが、ビジネスとしてのコスト効果もあります。セルフサービスのトランザクションは、エージェントが対応するサポートトランザクションの何分の1かのコストで済みます。
また、スケーラビリティや大量のチケット処理に関する問題もあります。セルフサービスでは、頻繁に発生する問題のチケット作成が削減されるため、エージェントがより複雑な問題に集中できるようになります。また、管理しやすいチケットキューがあれば、作業負荷に対処するためにリソースを増やす必要もなくなります。
さらに、ナレッジベースのコンテンツを作成してインターネットに公開すれば、インターネットの検索結果にコンテンツが表示されるため、企業の認知度が高まります(制限付きのヘルプセンターではなく、誰でもアクセス可能なヘルプセンターを提供している場合。「サインインしたエンドユーザーだけにヘルプセンターへのアクセスを許可する方法」を参照)。セルフサービスチャネルは、検索結果のランクを上げるため、新しいビジネスを生み出すのに役立ちます。
最後に、ナレッジベースは、カスタマーだけでなくエージェントにとっても価値のあるものです。優れたナレッジベースは、それを必要とするすべての人にとって、正確で最新の信頼できる情報源となります。ナレッジベースは参考資料であると同時に、優れたトレーニング教材でもあります。新人エージェントがチームに配属されたときなどに、ナレッジベースを利用することで、サポートしている製品やサービスについて迅速に理解することができます。
セルフサービスチャネルの要素
セルフサービスのスタート地点となるのは、ナレッジベースのコンテンツです。狭義のナレッジベースとは、製品やサービスがどのように機能するか、またそれらを使用する際に発生する一般的な問題の解決方法を説明するために作成したFAQやハウツー記事のことです。広い意味でのナレッジベースには、ユーザーのコミュニティと、そのコミュニティとナレッジベースのコンテンツを作成およびサポートしている人との間で交わされるやりとりによって生成されるコンテンツも含まれます。
コンテンツを公開すると、コンテンツの不足箇所を指摘する追加の質問や、さらなるアドバイス、ベストプラクティス、説明を提供するユーザーからのコメントが寄せられることがよくあります。
セルフサービスを開始するには、エンドユーザーやカスタマーが簡単にアクセスできるナレッジベースのコンテンツを公開する場所が必要です。その場所になるのがヘルプセンターです。Zendeskでは、Zendesk Guideを使ってヘルプセンターを構築します。
- ナレッジベース:ナレッジベースの記事を集めたもので、必要な構造やカテゴリ、記事に整理することができます。
- ナレッジベースのコメント:エンドユーザー(およびエージェント)が記事にコメントを追加できるようにすることで、追加の質問をしたり、それらの記事の中で直接、文脈に沿った回答をすることができます。
- カスタマーサービスポータル:エンドユーザーがナレッジベースで必要な情報を見つけられなかったときにチケットを作成して送信する場所です。GuideのProfessionalバージョンおよびEnterpriseバージョンでは、チケットの管理もできます。
- オンラインコミュニティ:Zendesk Gatherを利用して、ヘルプセンター内にオンラインコミュニティを作成することができます。このコミュニティでは、ユーザー同士の交流やコラボレーション、クラウドソーシングによるサポート、知識の共有、フィードバックなどを行うことができます。
セルフサービスチャネルの開発を進めていくと、セルフサービスコンテンツの作成、管理、監視、および改善に役立つZendeskの他の機能も発見できるでしょう。
Zendeskのセルフサービスの製品と機能
セルフサービスチャネルを作成および管理するために使用できる製品、アドオン、機能のすべてについて以下に紹介します(一部については上で説明済み)。
Zendesk Support | Zendesk Supportは、Zendesk Guideと連携して、セルフサービスチャネルの中核となるソリューションです。両ソリューションは密接に連携しており、ヘルプセンターのカスタマーエクスペリエンスの重要な要素の一部はZendesk Supportで設定し、有効にされます。Supportには、ヘルプセンターのアクティビティを監視するために欠かせないレポーティングツールもあります。詳細については、「Zendesk SupportとZendesk Guideの併用」を参照してください。 |
Zendesk Guide |
Zendesk Guideは、ヘルプセンターの構築に使用します。オーサリングツールとパブリッシングプラットフォームを兼ね備え、カスタマーのサポートの窓口となります(カスタマーはここでコンテンツを操作したり、サポートリクエストを送信および追跡できます)。作成したコンテンツは、カテゴリやセクションの中で記事として整理されます。 Guideには2つのバージョンがあります。 Guide Professional:ナレッジベースを作成および管理するための基本機能を備えています。下書きモードで記事を作成したら、他の人に下書きを確認してもらい、公開の準備が整ったら記事を公開することができます。また、エージェントが記事にフラグを立てたり記事を作成したり、AIによる推奨を活用したりできる「ナレッジキャプチャー」アプリも搭載されています。さらに、記事の改訂履歴機能や、記事を充実させたり、コンテンツに対するカスタマーエンゲージメントを評価するためのさまざまな機能も備えており、ヘルプセンター内にエージェント専用のナレッジベースを作成することもできます。 Guide Enterprise:この上位バージョンでは、複数のヘルプセンターを作成することができ、より多くのテーマテンプレートが用意されているほか、チームパブリッシング、コンテンツキュー、コンテンツブロックも搭載されています(いずれも後の項で説明)。また、最大で6階層までのサブセクションを作成することができます。 |
Zendesk Gather |
Zendesk Gatherは、ユーザー同士で交流し、協力し合えるコミュニティフォーラムです。コミュニティのユーザーは、必要な支援を他のコミュニティメンバーに求めることができます。Gatherは、ヘルプセンターのナレッジベースを補完する機能を備えています。Gatherを追加するには、まずGuideを設定する必要があります。 詳細については、「Zendesk Gatherの使い方」を参照してください。 |
Web Widget | Web Widgetを使用して、会話ボットやボットビルダーを使用した自動会話フローをWebサイトやヘルプセンターに埋め込むことができます。メッセージング経由での自動サポートのやりとりに、ヘルプセンターの記事へのリンクを含めることができます。詳しくは「Web Widgetを有効にしてメッセージングを提供する方法」を参照してください。 |
ナレッジキャプチャーアプリ |
ナレッジキャプチャーアプリを使用すると、エージェントはチケット内からヘルプセンターを検索し、関連するヘルプセンター記事へのリンクをチケットコメントに挿入できます。 また、更新が必要な既存の記事にインラインフィードバックを追加したり、既定のテンプレートを使用してチケットに回答しながら新しい記事を作成したりするのにも使用できます。 ナレッジキャプチャーアプリは、Guideプランの両バージョンとZendesk Suiteの全バージョンにデフォルトでインストールされます。詳しくは「ナレッジキャプチャーアプリを開く」を参照してください。 |
Zendeskボット | Zendeskボットは、機械学習を利用してカスタマーの質問に回答します。ナレッジベースのコンテンツから、AIがカスタマーの問題の解決に役立ちそうな記事を選び出してお勧めします。Zendeskボットは、メールの自動返信や、さまざまなZendesk製品やインテグレーションで使用できます(「Zendeskボットを使用できる場所の確認」を参照)。また、メッセージングを設定してAIを最初の回答者にさせることができます。 |
チームパブリッシング |
チームパブリッシングは、Guide Enterprise(Zendesk SuiteのEnterpriseプランとEnterprise Plusプランに含まれる)で利用でき、チーム内のコンテンツのコラボレーションや管理が容易になります。チームは、コラボレーションワークフローを設定して、コンテンツのレビュー、承認、公開を行うことができます。また、公開された記事のコンテンツ更新を、ライブコンテンツに影響を与えることなく段階的に行うこともできます。 詳細については、「Guideのチームパブリッシングの概要」を参照してください。 |
コンテンツキュー |
Guide Enterpriseにはコンテンツキューも搭載されています。AIを活用して受信チケットの内容を自動的に精査して、よくある質問やキーワードを特定し、それをヘルプセンターのコンテンツと比較して、コンテンツの追加や更新、カスタマーによる検索結果を改善するために記事に追加できるラベルなどを提案します。また、過去60日間でパフォーマンスの高かった記事やパフォーマンスの低かったコンテンツを特定し、コンテンツを改善したり、関連性のなくなったコンテンツをアーカイブすることができます。 詳細については、「コンテンツキューの概要」を参照してください。 |
コンテンツブロック |
コンテンツブロックはGuide Enterpriseにも搭載されており、記事間で共有可能なパラグラフをコンテンツブロックとして作成できる機能です。これは、免責事項や定型文のように、一度作成したコンテンツを一元的に管理し、複数の場所で再利用したい場合に便利です。 詳細については、「Enabling content blocks for reusing content in article(コンテンツブロックを有効にして記事内でコンテンツを再利用する方法)」を参照してください。 |
Zendesk Explore |
Zendesk Exploreにはレポーティングツールがあり、ナレッジキャプチャーやボットの利用に関する主要なメトリックを監視することができます。たとえば、ナレッジキャプチャーからリンクされた記事のうち、エンドユーザーから「役に立った」と評価され、リクエストを解決した記事の数を追跡することができます。 セルフサービスチャネルの一部としてZendesk Exploreを使用する方法について詳しくは、「Zendesk Guideダッシュボードの概要」および「Zendesk Guideのメトリックと属性」を参照してください。 |
このガイドの以下の記事では、セルフサービスコンテンツの計画から作成、管理、改善までの方法を説明しています。