オムニチャネルルーティングは、メール(Webフォーム、サイドカンバセーション、APIを含む)、コール、メッセージングからの新規およびオープンチケットを、エージェントの空き状況とキャパシティに基づいてエージェントに直接割り当てます。また、プランによっては、割り当ての際にサービスレベルアグリーメント(SLA)の目標、チケットの優先度、スキルも考慮するように設定できます。
標準のオムニチャネルルーティング設定では、すべての適格なチケットを1つのキューに送り、チケットに割り当てられたグループに基づいてエージェントに作業を割り当てます。キューが1つでは不十分な場合には、カスタムのオムニチャネルルーティングキューを作成して追加することができます。オムニチャネルルーティングを使用するには、エージェントワークスペースが必要です。
オムニチャネルルーティングキューに関する重要事項
- オムニチャネルルーティングの設定はすべてのキューに適用されます。
- 新しいチケットが作成されると、まずチケットトリガが起動します。次に、オムニチャネルルーティングは直ちにそのチケットをエージェントに割り当てようとします。対応可能なエージェントがいない場合、チケットは適切なキューに追加されます。
- オムニチャネルルーティングには2種類のキューがあります。
- 標準キュー:オムニチャネルルーティングをオンにしていて、カスタムキューを作成していない場合、またはチケットがカスタムキューの条件を満たしていないが、オムニチャネルルーティングのルーティング対象になっている場合に、オムニチャネルルーティングによって使用されるデフォルトのキューです。標準キューからルーティングされるチケットは、チケットのグループフィールドで指定されたグループのエージェントに送られるため、このルーティング方法は「グループベースのオムニチャネルルーティング」とも呼ばれます。標準キューは、管理センターの「キュー」ページには表示されません。
- カスタムキュー:管理者によって定義されたカスタムキューです。カスタムキューを使用する場合、チケットは条件に一致する最初のキューに入れられます。カスタムキューは、メインおよびセカンダリの複数のグループにチケットをルーティングできます。カスタムキューからチケットをルーティングする場合、オムニチャネルルーティングはチケットのグループフィールドを無視し、キューのメイングループとセカンダリグループを使用します。
- オートルーティングタグはカスタムキューでは使用されません。オートルーティングタグの有無にかかわらず、すべてのメールチケット、メッセージング会話、およびコールは、カスタムキューに一致するかどうか自動的に評価されます。ただし、どのカスタムキューにも条件が一致しないメールチケットを、オムニチャネルルーティングの標準キューからルーティングさせたい場合は、オートルーティングタグが必要です。
- オムニチャネルルーティングは、「キュー」ページに表示されるキュー順にチケットとキューを照合させます。チケットは条件を最初に満たしたキューに追加されます。
- どのカスタムキューにも一致しないチケットは、オムニチャネルルーティングの標準キューに入れられます。ただし、オムニチャネルルーティングでは、チケットの優先度に関係なく、カスタムキューにルーティングされたチケットがすべて、オムニチャネルルーティングの標準キューからルーティングされたチケットよりも優先されます。
- チケットの順序付け方法(優先度やタイムスタンプ、またはSLA違反までの残り時間に基づく)は、オムニチャネルルーティングの標準キューにもカスタムキューにも適用されます。
- 複数のキューから仕事を受け取れるエージェントには、優先度の低いキューよりも高いキューからのチケットが先に割り当てられます。詳しくは「オムニチャネルルーティングのカスタムキューの作成」を参照してください。
- エージェントに割り当てられたチケットは、キューから出されます。
- オムニチャネルルーティングでは、Talkチケットは再割り当てできません。メールおよびメッセージングのチケットは再割り当てすることができますが、再割り当てがカスタムキューと標準キューのどちらで行われるかは、ルーティングの設定によります。
- TeamプランとGrowthプランでは、エージェントに割り当てられた後、カスタムキューに再び入れられることはありません。ただし、再ルーティングの対象となったチケットは、ルーティングが適格とされたタイムスタンプに基づいてオムニチャネルルーティングの標準キューに入れられ、チケットに割り当てられたグループに基づいてルーティングされます。
- Professional以上のプランでは、オムニチャネルルーティングを設定することで、カスタムキュー経由でチケットを再割り当てすることができます。オムニチャネルルーティングでは、エージェント個人に割り当てられた後に再びグループに割り当てられたチケットは、条件を最初に満たしたキューに追加されます。チケットがどのカスタムキューの条件にも当てはまらない場合、チケットは標準のオムニチャネルルーティングキューに入れられ、チケットに割り当てられたグループに基づいてルーティングされます。
- Exploreでは、カスタムキューのパフォーマンスをレポートすることができます。詳しくは「Exploreレシピ:オムニチャネルのカスタムキューのパフォーマンスをレポートする」を参照してください。
オムニチャネルルーティングでカスタムキューを使用する
オムニチャネルルーティングは、Zendeskで最も洗練された完成度の高いルーティングソリューションです。チャネル間で一貫したルーティングロジックを提供し、エージェントへチケットを割り当てる際に多くの要素を考慮します。多くのユースケースでは、オムニチャネルルーティングをオンにしたときにアクティブになる、オムニチャネルルーティングの標準キューを使用すれば十分です。オムニチャネルルーティングの標準キューのみを使用する場合、オムニチャネルルーティングでエージェントにルーティングするには、チケットをグループに割り当てる必要があり、メールによるチケットには自動ルーティングタグを含める必要があります。これが「グループベースのオムニチャネルルーティング」と呼ばれる理由です。
ときには、チケットに割り当てられた1つのグループにチケットをルーティングさせることは現実的でなかったり、望ましくなかったりする場合があります。そのような場合、カスタムキューを作成することで、チケットが割り当てられているキューに基づいて、複数のグループに仕事をルーティングすることができます。複数のキューを作成することで、メイングループの全エージェントが利用できない場合にのみ、キューからチケットを受け取るセカンダリグループまたは「オーバーフロー」グループを定義することが可能になります。キューにメイングループとセカンダリグループを複数割り当てると、オムニチャネルルーティングは、すべてのメイングループを1つのエージェントプールとして扱い、必要に応じてセカンダリグループのすべてのエージェントも含めるように拡張します。「キューベースのルーティング」を使用した場合、オムニチャネルルーティングは、チケット自体に指定されているグループを無視して、キューのメイングループとセカンダリグループを使用してエージェントにチケットを割り当てます。
詳細については、「追加のオムニチャネルルーティングキューの作成」を参照してください。
オムニチャネルルーティングがキュー内のチケットの順序を決める仕組みについて
チケットがルーティングの対象になると、オムニチャネルルーティングは、利用できる適格なエージェントにそのチケットを割り当てようとします。すぐに割り当てることができない場合、チケットはキューに入れられます。オムニチャネルルーティングを設定し、キュー内のチケットを順序付けるには、チケットの優先度とタイムスタンプに基づく方法、またはSLA違反までの残り時間に基づく方法の2つがあります。標準のオムニチャネルルーティングの設定では、チケットがルーティングの対象となった時間が使用されます。さらにProfessionalプラン以上ではチケットの優先度が使用されます。
チケットが新たに作成または更新されると、チケットのトリガが自動的に起動し、エージェントにルーティングするチケットをキューに入れる条件がオムニチャネルルーティングによって評価されます。カスタムキューを作成している場合、チケットがキューの条件に一致しているかが評価され、一致した場合は、SLA目標またはチケットの優先度に基づいてそのキューに追加されます。一方、どのカスタムキューにも一致しない場合は、同じ基準に基づいてオムニチャネルルーティングの標準キューに追加されます。カスタムキューを作成していない場合、またはチケットがカスタムキューの条件を満たしていない場合、そのチケットは標準キューに入れられます。
優先度とタイムスタンプによるチケットの順序
- ルーティングの対象となるチケット
- ルーティングの対象となるチケットのタイムスタンプ
- ルーティングの対象外時間
- チケットの優先度(Professionalプラン以上)
ルーティングの対象となるチケット
オムニチャネルルーティングでルーティングの対象となるチケットは、チケットが標準キューに入るかカスタムキューに入るかによって異なります。
- グループに割り当てられていること
- ステータスまたはステータスカテゴリが新規またはオープンであること
- 割り当てられていないこと
- オートルーティングタグを含むこと(メールチケットのみ)
- ステータスまたはステータスカテゴリが新規またはオープンであること
- 割り当てられていないこと
- チケットはグループに割り当てられておらず、カスタムキューにも該当しない
- チケットがエージェントに割り当てられている
- チケットのステータス(またはステータスカテゴリ)が保留中、待機中、または解決済みである
- チケットがソフト削除されている
- (メールチケットおよび標準キーの場合のみ)チケットに自動ルーティングタグが含まれていない
ルーティングの対象となるチケットのタイムスタンプ
- 初回のルーティング対象タイムスタンプは、チケットが初めてオムニチャネルルーティングの対象となった時刻です。
- 後続のルーティング対象タイムスタンプとは、ルーティング対象だったチケットが対象外となった後、オムニチャネルルーティングによって再度ルーティング対象となった時刻です。
ルーティングの対象外時間
オムニチャネルルーティングは、チケットがルーティング対象外となっていた時間を追跡し、その時間データに基づいて、チケットをルーティングキューに戻す際にどのルーティングタイムスタンプを使用するかを決定します。これは「ルーティングの対象外時間」と呼ばれます。
チケットのルーティング対象外時間をチェックすることで、増え続けるタイムスタンプを追跡することによって引き起こされるパフォーマンスの低下を防止し、時間経過とともにチケットの優先度が変わることも考慮されます。
チケットの優先度
Professionalプラン以上では、オムニチャネルルーティングは、まず優先度に基づいてチケットを自動的に順序付けし、次にルーティング対象のタイムスタンプに基づいてチケットを順序付けます。この並べ替え方法では、最も古く、最も重要なチケットが優先されます。
ただし、SLAを使用する場合、チケットの優先度と古さは、キュー内のチケットの順序付けに使用する最も重要なメトリックにはならないかもしれません。
SLA違反までの残り時間でチケットを順序付けする
チケットをSLA違反までの残り時間順に並べることで、ルーティングロジックをサービスコミットメントと整合させ、目標達成の効率を高めることができます。
- 使用するチケットの順序付け方法は、任意のキュー内のチケットの並び順を決定しますが、キュー間のチケット割り当ての優先度には影響しません。エージェントが複数のキューから仕事を受け取ることができる場合、優先度の高いキューからのチケットは、優先度の低いキューからのチケットよりも先にエージェントに割り当てられます。これは、優先度の低いキューにあるチケットがSLA目標に違反するまでの残り時間に関係なく当てはまります。カスタムキューを作成し、並べ替える際には、この点を考慮してください。
- 次のSLA違反までの残り時間に基づいてチケットを順序付けする場合、この設定が適用されるのは新規および再オープンされたチケットにのみです。この設定を有効にしたときにすでにキューに入っていたチケットは、以前と同じように優先度とタイムスタンプ順に並べられます。
- チケットの順序付けは、チケットがキューに入った時点のSLA目標に基づいて行われます。チケットがエージェントにルーティングされる前にSLAポリシーが変更された場合、ルーティングの目的で古いSLA目標が引き続き使用されます。
- 次のSLA違反までの残り時間に基づいてチケットを順序付けする場合、チケットの優先度やタイムスタンプに関係なく、SLA目標を持つすべてのチケットは、SLA目標を持たないチケットよりも早い順序に並べられます。SLA目標のないチケットは、優先度とルーティング対象のタイムスタンプに基づいて並べられます。
SLA目標に基づいてチケットを順序付けする場合は、オムニチャネルルーティング設定を更新して、サービスレベルアグリーメントでチケットの優先度を設定します。
まとめ:優先度とタイムスタンプによるキュー内のチケットの順序付け
標準の設定では、チケットの優先度とルーティングの対象時間に基づいてチケットを順序付けし、割り当てます。標準のオムニチャネルルーティング設定を使用した場合のチケットのライフサイクルを確認してみましょう。
- 2024年1月1日に、カスタマーがメールを送信し、08:30にチケットが作成されました。
- チケットの作成とともにトリガが起動し、オムニチャネルルーティングがチケットのキューを評価します。
- トリガが起動すると、自動ルーティングタグが追加され、チケットはグループ1に割り当てられます。これらのチケット更新は、チケットが作成されてから1分後に行なわれます。(08:31)
初回のルーティング対象タイムスタンプは2024:01:01:08:31です。
- オムニチャネルルーティングはルーティング対象のチケットを認識し、チケットの初回のルーティング対象タイムスタンプを使用してチケットをキューに追加し、キュー内の順位を決定します。
- キュー内のすべてのチケットの優先度が同じ場合、2024年1月1日08:31より前のタイムスタンプのチケットはキュー内でこのチケットより前に配置され、それ以降のタイムスタンプのチケットは後に配置されます。
- 各チケットの優先度がそれぞれ異なる場合、優先度の最も高いチケットはキューの先頭に置かれ、タイムスタンプの順に次に高い優先度を持つチケットが続きます。
- トリガが起動すると、自動ルーティングタグが追加され、チケットはグループ1に割り当てられます。これらのチケット更新は、チケットが作成されてから1分後に行なわれます。(08:31)
- チケットがキューの先頭に到達すると、オムニチャネルルーティングは、グループ1のエージェントのうち、対応可能で余力のあるエージェントを探します。08:37にエージェントが見つかり、チケットが割り当てられます。
チケットがエージェントに割り当てられると同時に、そのチケットはルーティングの対象外となります。チケットのルーティング対象外時間は2024年1月1日08:37から始まります。
- チケットに3日間対処した後、2024年1月4日の正午(12:00)にエージェントがチケットをグループ2に再割り当てします。
新しいグループの割り当てにより、以前にチケットに割り当てられていたエージェントが削除されたため、チケットは再びルーティングの対象となります。このチケットのルーティング対象外時間は15日未満であったため、チケットはキューに再び入れられ、初回のルーティング対象タイムスタンプ(2024:01:01:08:31)に基づいてキュー内の順位が決められます。
優先順位が等しいと仮定した場合、このチケットは、このチケットが最初にキューに追加された後にルーティング対象となったすべてのチケットよりも先に挿入されます。
- オムニチャネルルーティングでは、チケットがキューに追加されてから数分後に、グループ2のエージェントに割り当てられます。
- グループ2のエージェントに割り当てられてから20日後、そのエージェントは、自分が所属していない別のグループにチケットを再割り当てすることにしました。(タイムスタンプ:2024:01:24:10:45)
チケットのルーティング対象外時間が15日を超えたため、チケットは優先度と最新の後続のルーティング対象タイムスタンプ(2024:01:24:10:45)に基づいてキューに入れられます。2024年1月24日午前10時45分より前にルーティングの対象となった優先順位が同等以上のチケットで、まだルーティング対象外の期間が15日間であったチケットは、キュー内でこのチケットより上になります。
- チケットがキューの先頭に達すると、オムニチャネルルーティングによって別のエージェントに割り当てられます。このエージェントがチケットを処理し、ステータスを「解決済み」に変更します。