サービスレベルアグリーメント(SLA)は、サポートチームがお客様との間で、応答および解決策を提供するまでのそれぞれの時間を取り決めたものです。サービスレベルに基づいてサポートを提供することで、標準に基づいた予測可能なサービスを確実に提供することができます。また、問題発生時に見通しを立てやすくなります。
管理者とエージェントがサービスレベルのパフォーマンスを監視し、サービスレベル目標を達成できるように、Zendesk SupportではSLAサービス目標を設定できます。問題をすばやく特定し対処できるように、Zendesk Supportではサービスレベル目標に達していないチケットがハイライトされます。
- SLAポリシーを適用するために、チケットが満たさなくてはならない条件セット。
- 必要なメトリックと優先度の値の目標時間。
- 測定するために選択したひとつ以上のメトリック。
- 目標を営業時間とカレンダー時間のどちらで測定するかを指定する優先度値
ブラッシュアップ:SLAを最大限活用する方法について詳しくは、Sam Chandlerの投稿「ブラッシュアップ:SLAで成功する - その理由とタイミングと方法」をお読みください。
チケットにSLAポリシーが適用されるしくみについて
チケットが作成または更新されたとき、Zendesk Supportインスタンスにすでに設定済みの通常のトリガすべてが、そのチケットに対して実行されます。トリガが適用された後で、チケットにSLAポリシーが適用されるかどうかが確認されます。
ポリシーリストの先頭から下に向かって、ポリシーの条件がチケットと照合されます。チケットの内容がポリシーの条件と一致する最初のポリシーが見つかると、そのポリシーがチケットに適用されます。ポリシーの順序については、「SLAポリシーの順序を設定する」を参照してください。どのポリシーがどのような順序でチケットに適用されたかを確認するには、「チケットに適用されているSLAポリシーを確認する」を参照してください。
チケットが更新されても、ほとんどの場合、すでに適用済みのポリシーとまったく同じポリシーに一致するだけで、何も変更されません。チケットの優先度が変更された場合、そのチケットが最後に更新されてからSLAポリシーを変更していなければ、新しい優先度を反映してチケットの目標時間が更新されます。
もちろん、例外もあります。チケットの最終更新の後に、より限定的な新しいポリシーを作成した場合、それまで存在しなかったその新しいポリシーがチケットに適用される可能性があります。または、すでに適用されているポリシーの目標を更新することがあるかもしれません。どちらの場合も、優先度やスケジュールの変更など、SLAに影響を与えるチケット更新が行われると、チケットは新しい情報を受け取ります。
SLAを含む古いチケットを新しいチケットに統合すると、古いチケットのSLAステータスは、達成されたかどうかにかかわらず中止されます。新しいチケットは独自のSLAで処理されます。統合アクションは、新しいチケットの内部更新として表示され、SLAを満たしたり変更したりすることはありません。
チケットが「解決済み」に設定されると、アクティブなSLA目標が即座にすべて満たされます。
すでに違反しているSLA目標を適用または変更した場合、違反は更新時に記録されます。過去のSLA違反イベントにはさかのぼりません。
測定できるSLAメトリックについて
初回返信時間、次の返信時間、更新間隔時間、一時停止可能な更新、リクエスタの待機時間、エージェントの稼働時間という、6つの異なるメトリックについてSLAサービス目標を定義できます。最初の4つのメトリックは返信までの所要時間を計測し、あとの2つのメトリックは解決までの時間を測定します。
返信時間のメトリック
次のメトリックは返信が行われるまでの時間を測定します。
-
初回返信時間:チケットが作成された時刻から、エージェントが最初のパブリックコメントを投稿するまでの時間を分単位で表したものです。初回返信時間には、以下のようなシナリオがあります。
最初のコメントの作成者 最初のコメントの可視性 SLAの初回返信時間の動作 エンドユーザー パブリック SLAの初回返信時間の目標は、最初にコメントが付けられてから、次にパブリックエージェントのコメントが付くまでの時間です。これが最も一般的なワークフローであり、典型的な動作です。 プライベート SLAの初回返信時間の目標は、チケットがパブリックになった後、エンドユーザーが初めてパブリックコメントを付けるまで開始されません。つまり、初回の返信は、エージェントのパブリックコメントが付いた後に開始できます。開始されると、初回返信時間の目標は、エンドユーザーのパブリックコメントから、エンドユーザーのコメントが付いた後、次のパブリックエージェントコメントが付くまでの時間です。 エージェントまたは管理者 パブリック SLAの初回返信時間の目標は、作成と同時に達成されます。達成度をアクティブにしたり、記録したりすることはありません。 プライベート SLAの初回返信時間の目標は、チケットがパブリックになった後、エンドユーザーが初めてパブリックコメントを付けるまで開始されません。つまり、初回の返信は、エージェントのパブリックコメントが付いた後に開始できます。エンドユーザーが返信した後、エージェントが次回のパブリックコメントを付けるまでの時間です。 ライトエージェント プライベート SLAの初回返信時間の目標は、最初にコメントが付けられてから、次にパブリックエージェントのコメントが付くまでの時間です。 メモ:サイドカンバセーションチケットのSLA初回返信時間目標には、追加の考慮事項があります。詳しくは、「社内のSLAや子チケットのサイドカンバセーションを利用したOLAポリシーの定義」を参照してください。 - 次の返信時間:回答されていないカスタマーのコメントのうち最も古いものが作成されてから、エージェントが次にパブリックコメントを作成するまでの時間を分単位で表したものです。
- 更新間隔時間:エージェントからの各パブリックコメント間の間隔(分単位)です。保留中もSLAの測定は継続します。ユーザーがチケットを再オープンした場合、エージェントが別のコメントを作成するまで、更新間隔時間は開始されません。
- 一時停止可能な更新:「新規」、「オープン」、「待機中」ステータスにあるチケットにおけるエージェントからの各パブリックコメント間の間隔であり、チケットが「保留中」になったときに測定を一時停止します。
初回返信時間および次の返信時間メトリックでは、通常はエンドユーザーによるコメントが開始点となり、エージェントのパブリックコメントが終了点となります。以下の図で、これらのメトリックがチケットライフサイクルのどの時期に相当するか見てみましょう。
更新間隔時間メトリックは、エージェントのパブリックコメントを開始点として使用し、以降、コメントが追加されるたびにリセットされます。たとえば、更新間隔時間が30分の場合、エージェントは30分ごとに新しいパブリックコメントを追加する必要があります。
一時停止可能な更新メトリックは、新規または既存のチケットに対してエージェントがパブリックコメントを追加したタイミングで開始されます(ただし、チケットのステータスは保留中でなければなりません)。エージェントがパブリックコメントを追加し、同じイベント内でチケットを「保留中」にした場合、パブリックコメントの付いたチケットが初めて「新規」、「オープン」、「待機中」のいずれかのステータスで送信されるまで、メトリックはそのチケットに適用されません。チケットが「保留中」に設定されると、メトリックが適用されます。コメントが追加されると、メトリックは保留中となり一時停止します。プライベートコメントを追加するか、またはコメントを追加せずにエージェントがステータスを保留中以外に変更した場合、メトリックは再開されます。
解決時間のメトリック
以下のメトリックは問題の解決までに要した時間を測定します。
- リクエスタの待機時間:チケットが新規、オープンおよび待機中のステータスであった時間の合計。保留中は、SLAの測定は一時停止されます。
- エージェント作業時間:チケットが新規およびオープンのステータスであった時間の合計。保留中および待機中は、SLAの測定は一時停止します。
なお、複数の解決時間メトリックを選択することもできますが、混乱を避けるために1つに絞るのが最善の方法です。
解決時間のメトリックはコメントではなく、常に、チケットの開始、一時停止中、停止のステータスを使用します。以下の図で、解決時間のメトリックがチケットライフサイクルのどの時期に相当するか見てみましょう。
チケットの再オープンがSLAに与える影響
- 初回返信時間、次の返信時間:エンドユーザーのパブリックコメントでチケットが再オープンし、すべての条件が満たされた場合、関連する返信時間メトリックで新しい目標がアクティブになります。
- 定期更新、一時停止可能な更新:エンドユーザーのコメントでチケットが再オープンした場合、何も起こりません。パブリックコメントが追加されてチケットが再オープンした場合、関連する更新メトリックで新しい目標がアクティブになります。
- エージェント作業時間:このメトリックは、同じターゲットを同じ経過時間/残り時間で再アクティブ化し、「解決済み」ステータスの時間を一時停止と同様に扱います。チケットが「保留中」/「待機中」ステータスになると、チケットが「オープン」ステータスになるまで一時停止したままになります。
- リクエスタの待機時間:このメトリックは、同じターゲットを同じ経過時間/残り時間で再アクティブ化し、「解決済み」ステータスの時間を一時停止と同様に扱います。チケットが「保留中」ステータスになると、チケットが「オープン」/「待機中」ステータスになるまで一時停止したままになります。
SLAポリシーを設定する
SLAポリシーを設定するには、上で説明したメトリックに、条件と目標を組み合わせる必要があります。
SLAポリシーの条件は、トリガの設定に使用する条件によく似ています。トリガの条件と同様に、どちらにも「すべて」と「任意」の条件があり、チケットフィールド、ユーザーフィールド、組織フィールドに対して設定できます。ただし、トリガよりもオプション数は少なくなっています。たとえば、チケットのステータスや優先度に基づく条件は作成できません。これらの情報は、SLAポリシーのモデルにすでに組み込まれているためです。カスタムチケットステータスをアクティブにしている場合、チケットステータスに基づく条件を使用してSLAポリシーを作成することができます。
カスタムチケットフィールドの使用方法の詳細については、「ビジネスルールとビューでのカスタムチケットフィールドの使用方法」を参照してください。
目標とは、特定の時間ベースのメトリックが満たす必要のある目標です。たとえば、緊急のチケットすべてに対して、初回の返信を15分以内に行うというポリシーを指定したい場合、目標を15分に設定します。ポリシーごとに、メトリックと優先度の組み合わせについて個々の目標を定義できます。また、個々の優先度とポリシーの時間の種類については、営業時間とカレンダー時間のどちらでも設定できます。
SLAポリシーを設定するには
- 管理センターで、サイドバーの「
オブジェクトとルール」をクリックし、「ビジネスルール」>「サービスレベルアグリーメント」を選択します。
- 「ポリシーを追加」をクリックします。
- 「ポリシー名」フィールドに名前を入力します。
- 必要に応じて、「説明」フィールドに説明を入力します。
- 「条件」セクションで、このポリシーの条件を選択します。条件の最初の数文字を入力するか(自動入力機能で残りは自動入力されます)、ドロップダウンメニューからオプションを選択します。
- 「目標」セクションで、各メトリックとチケットの優先度について目標時間を入力します。時間、分、または両方を入力することができます。解決時間のメトリックは2つありますが、必ず一方だけを使用するようにしてください。
- それぞれの優先度について、「時間の種類」で「カレンダー時間」または「営業時間」を選択します。
- 「保存」をクリックします。
コミュニティのヒント:常に正しいポリシーが適用されるようSLAを設定する方法については、Mat Cropperの記事「Running triggers, automations, and reporting based on ticket SLAs(チケットのSLAに基づくトリガ、自動化、レポーティングの実行)」を参考にしてください。また、タイムゾーン別にSLAを設定する方法については、Mark Powellの記事「Using SLAs with different time zones, contracts, and business hours(異なるタイムゾーン、連絡先、営業時間に応じたSLAを使用する)」をお読みください。
- 管理センターで、サイドバーの「
オブジェクトとルール」をクリックし、「ビジネスルール」>「サービスレベルアグリーメント」を選択します。
- 編集するSLAポリシーをクリックします。
- 必要に応じてポリシーを編集し、「保存」をクリックします。
SLAポリシーの順序を設定する
重複するポリシーを作成することは論理的には可能ですが、ひとつのチケットには常にひとつのポリシーしか適用できません。チケットに一致するポリシーが複数ある場合、ポリシーの順序を使用してポリシーの均衡を破ります。ポリシーの順序がチケットに与える影響について詳しくは、「チケットにSLAポリシーが適用されるしくみについて」を参照してください。どのポリシーがどのような順序でチケットに適用されたかを確認するには、「チケットに適用されているSLAポリシーを確認する」を参照してください。
ポリシーの効果を最大限に引き出すには、最も制限の強いポリシーから、制限の緩いポリシーの順に、ポリシーを大まかに並べ替えます。
SLAポリシーを順序付けるには
- 管理センターで、サイドバーの「
オブジェクトとルール」をクリックし、「ビジネスルール」>「サービスレベルアグリーメント」を選択します。
- 順序を変えるSLAポリシー名にマウスのポインタを合わせて、ハンドルをハイライトさせます。
- ポリシーを順序内の新しい位置へドラッグします。
SLAをビューに追加する
チケットのステータスと同様、チケットに表示されるSLA目標のステータスもさまざまです。エージェントは、チケットまたはビュー内の「次のSLA違反」列でこれらのステータスを確認できます。「次のSLA違反」列には、そのチケットが次に目標に違反するまでの時間がカレンダー時間で表示されます。
SLAステータスの種類の詳細については、「SLA目標のステータスについて」を参照してください。目標のステータスがこの列にどのように表示されるかについて詳しくは、「SLAステータスをビューで確認する」を参照してください。
現時点では、SLA違反に基づいてエージェントに通知を送信する機能はありません。
SLAをビューに追加するには
- サイドバーのビューアイコン(
)をクリックし、ビューを選択します。
- 右上にあるビューのオプションメニューをクリックします。
- 「編集」をクリックします。
- 「フォーマットオプション」セクションまで下にスクロールします。
- 「表に含まれていない列」で、「次のSLA違反」をクリックします。
- 「次のSLA違反」を「表に含まれている列」にドラッグします。
- 目標に著しく違反しているチケットや、もうすぐ目標に違反しそうなチケットが目につきやすいように、「表示順」>「次のSLA違反」>「昇順」を選択します。
- 「送信」をクリックします。
自動化内でSLA違反を使用する
「最後のSLA違反からの時間」と「次のSLA違反までの時間」という2つの条件を使用することで、SLA違反のステータスに基いた自動化を設定できます。自動化の作成の詳細については、「時間ベースのイベントと自動化を使用したワークフローの効率化」を参照してください。
現時点では、SLA違反のステータスに基づくトリガを作成することはできません。
SLAをレポートする
「SLAレポート」ダッシュボードを使用すると、SLAポリシーの達成状況をひとめで把握できます。このダッシュボードは、測定する各SLAメトリックについて、該当する情報を示します。このレポートにより、さらなる効率化が必要となる領域を正確に特定することや、週ごとまたは時間ごとの情報に基づいた人材配置などが可能になります。
新しいカスタムSLAレポートを作成するか(「Zendesk Supportのメトリックと属性」および「Exploreレシピ:SLAパフォーマンスの確認」を参照)、または既定のレポーティングダッシュボード(「Supportアクティビティの分析」を参照)を使用することができます。
なお、既定のレポートは、チケットベースではなく、インスタンスベースで作成されていますので注意が必要です。ほとんどのSLAメトリック(返信時間、リクエスタの待機時間、エージェントの作業時間)は、チケットごとに1回測定されます。ただし、次の返信時間と更新間隔時間は、コメント間の時間を測定するために使用されます。したがって、これらのメトリックは複数回計算される可能性があります。
たとえば、カスタマーのコメントに対して、1回目は目標時間内に対応したとしても、3回目のコメントに対する回答が、目標時間を超えてしまうかもしれません。個々の達成と違反については、個別のインスタンスとして計算されます。
「次の返信時間」の達成率を算出する場合、個々の達成と違反が計算されるしくみを以下に説明します。
- チケットA:違反1回、達成3回(インスタンス4個)
- チケットB:違反1回、達成5回(インスタンス6個)
- チケットC:違反0回、達成3回(インスタンス3個)
- チケットD:違反3回、達成1回(インスタンス4個)
- チケットE:違反0回、達成3回(インスタンス3個)
全体として、5件のチケットの20個のインスタンスについて次の返信時間が測定されました。達成したインスタンスの数をインスタンスの合計数で割ることで、「% Achieved」(達成率)が計算されます。この例では、達成率は75%となります。
% Achievement = 達成インスタンス15個 ÷ 測定インスタンス20個 = 75%
SLAメトリックインスタンスの属性は、カスタムレポートを独自に作成する場合も重要です。個々のインスタンスを表示するには、この属性でレポートを切り出す必要があります。この属性を表示するには、「How」>「Ticket SLAs」を選択します。
SLAポリシーを削除する
SLAポリシーは、不要になった場合に削除できます。
SLAポリシーを削除するには
- 管理センターで、サイドバーの「
オブジェクトとルール」をクリックし、「ビジネスルール」>「サービスレベルアグリーメント」を選択します。
- 削除するSLAポリシーを見つけます。
- SLAポリシーのタイトルの横にあるオプションメニュー(
)をクリックします。
- 「削除」を選択し、選択を確定します。
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